Study of the Holocaust is mandatory in all South African high schools since 2005. The story of Hana's Suitcase has been used as a way to introduce the subject.
In August 2008, South African edition of Hana's Suitcase was published with the foreword by Archbishop Desmond Tutu. Lara Brady, niece of Hana Brady, and Fumiko Ishioka, director of the Tokyo Holocaust Education Resource Center were invited for the launch.
They also visited several schools and met with 2,000 students and adults in Cape Town, Durban, and Johannesburg.
"Hana's Suitcase" by Karen Levine
(Second Story Press)
With forward by Archbishop Desmond Tutu
ノーベル平和賞受賞者
南アフリカのアパルトヘイトと闘ったデズモンド・ツツ氏 メッセージ『ハンナのかばん』に寄せて(南アフリカ版序文)
希望に満ちた若い命が、何の前触れもなく、突然失われるのは、いつの時代でも耐え難く悲しい事です。ホロコーストの悲劇が生み出した、胸が痛む物語は数多く語られてきました。即座に思い浮かぶのは『アンネの日記』でしょう。
しかし、世界中の架け橋となった物語もあります。それが『ハンナのかばん』です。ホロコーストから55年経った2000年、日本のホロコースト教育資料センターの石岡史子が日本の子どもたちの好奇心に背中を押され、歩き始めました。
この本は、ある一つの古びたスーツケース(アウシュビッツ強制収容所で没収された何千という数に上るスーツケースの中の一つ)に書かれた一人の人物の名前に「生命」が吹き込まれるまでの、壮大で感動的な、そして驚くべき追跡の物語です。
この質素なスーツケースが、ハンナの身に起きた悲しい出来事を通して、歴史が物語る警告を全世界の子どもたちに発信しているのは、本当に驚くべきことです。ハンナの物語は、私たち一人ひとりが常に、非人道的な 行い、偏見や憎しみ、それらに無関心であることがいかに恐ろしい結果をもたらすかを語りかけています。
ホロコーストは遠い昔の、遠い国での出来事と感じている現代の南アフリカの教師たちにとって、本書はとても良い教材となるでしょう。何百万人もの命が奪われたことや、迫害の事実は、容易に理解できるものではありません。事の重大さを理解するためには、どうしても体験者の物語が必要です。
ハンナはごく一般的な家庭に生まれ育ち、ささやかな将来の希望や夢を抱いていた少女です。しかし、ハンナの将来は、彼女が「ユダヤ人に生まれた」というただそれだけの理由で、かき消されてしまいました。ハンナや両親が何か間違った行いをしたというわけではありません。ハンナの夢、一家に対する差別的な法律、社会からの排除、両親の投獄、幼いハンナが背負ったであろう大きな重荷、それらのこと全てに、ここ南アフリカで生活する少年少女たちは共鳴するでしょう。母国の過去を学習する中でも同様な思いを抱くに違いありません。
これからの南アフリカを築き上げようと努力している私たちに、本書は一人ひとりが互いの差異に左右されることなく、人としての無限の価値を認め合い、寛容で公平な社会を築き上げることの大切さを、再認識させてくれます。
ハンナの夢は教師になることでした。このささやかな本を通して、ハンナは確かに自分の夢を実現させているのです。
デズモンド・ツツ (ケープタウン名誉大主教)
*日本語版は『ハンナのかばん-アウシュビッツからのメッセージ』(ポプラ社)
南アフリカのアパルトヘイトと闘ったデズモンド・ツツ氏 メッセージ『ハンナのかばん』に寄せて(南アフリカ版序文)
希望に満ちた若い命が、何の前触れもなく、突然失われるのは、いつの時代でも耐え難く悲しい事です。ホロコーストの悲劇が生み出した、胸が痛む物語は数多く語られてきました。即座に思い浮かぶのは『アンネの日記』でしょう。
しかし、世界中の架け橋となった物語もあります。それが『ハンナのかばん』です。ホロコーストから55年経った2000年、日本のホロコースト教育資料センターの石岡史子が日本の子どもたちの好奇心に背中を押され、歩き始めました。
この本は、ある一つの古びたスーツケース(アウシュビッツ強制収容所で没収された何千という数に上るスーツケースの中の一つ)に書かれた一人の人物の名前に「生命」が吹き込まれるまでの、壮大で感動的な、そして驚くべき追跡の物語です。
この質素なスーツケースが、ハンナの身に起きた悲しい出来事を通して、歴史が物語る警告を全世界の子どもたちに発信しているのは、本当に驚くべきことです。ハンナの物語は、私たち一人ひとりが常に、非人道的な 行い、偏見や憎しみ、それらに無関心であることがいかに恐ろしい結果をもたらすかを語りかけています。
ホロコーストは遠い昔の、遠い国での出来事と感じている現代の南アフリカの教師たちにとって、本書はとても良い教材となるでしょう。何百万人もの命が奪われたことや、迫害の事実は、容易に理解できるものではありません。事の重大さを理解するためには、どうしても体験者の物語が必要です。
ハンナはごく一般的な家庭に生まれ育ち、ささやかな将来の希望や夢を抱いていた少女です。しかし、ハンナの将来は、彼女が「ユダヤ人に生まれた」というただそれだけの理由で、かき消されてしまいました。ハンナや両親が何か間違った行いをしたというわけではありません。ハンナの夢、一家に対する差別的な法律、社会からの排除、両親の投獄、幼いハンナが背負ったであろう大きな重荷、それらのこと全てに、ここ南アフリカで生活する少年少女たちは共鳴するでしょう。母国の過去を学習する中でも同様な思いを抱くに違いありません。
これからの南アフリカを築き上げようと努力している私たちに、本書は一人ひとりが互いの差異に左右されることなく、人としての無限の価値を認め合い、寛容で公平な社会を築き上げることの大切さを、再認識させてくれます。
ハンナの夢は教師になることでした。このささやかな本を通して、ハンナは確かに自分の夢を実現させているのです。
デズモンド・ツツ (ケープタウン名誉大主教)
*日本語版は『ハンナのかばん-アウシュビッツからのメッセージ』(ポプラ社)